ベースアップ評価料の制度見直しを求める要望書

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2024年5月29日

内閣総理大臣 岸田 文雄 殿
厚生労働大臣 武見 敬三 殿

一般社団法人 茨城県保険医協会
会  長   高 橋  秀 夫

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 2024 年度の診療報酬改定では、医療機関職員の賃上げに係る評価として「ベースアップ評価料」が創設されました。昨今の物価高騰、他業種での高水準の賃上げをみれば、医療分野においても賃上げは必須であります。しかしながら、今回創設された「ベースアップ評価料」は蓋を開けてみると、医療機関が難渋する要素が多分に含まれたものであることがわかりました。
 当会が2024年4月15日~4月25日の期間で行った「【ベースアップ評価料】医療機関での届出・算定に関する緊急状況調査」では、71.2%の医療機関が施設基準の届出について「様子を見る」または「届出しない」と回答しました。また、その傾向は無床診療所でより強くあらわれております。
 届出を敬遠する最大の理由として、82.1%の医療機関が「届出を行うための実務が煩雑で対応できない」と回答しております。これは、届出時に添付する「賃金改善計画書」の作成、その結果を報告する「賃金改善実績報告書」の作成が大変複雑であるため、届出を躊躇するものです。
 もう一つの懸念事項として、54.3%の医療機関が、診療報酬明細書に「ベースアップ評価料」と記載されることによる患者対応をあげています。診療報酬は療養の給付に対して支払われるものですが、ベースアップ評価料は医療機関職員の賃上げに限定したものであり、算定時、患者への説明がつかずに現場で苦慮することが想定されます。
 更に、本調査では、ベースアップ評価料において、賃上げ対象職種が限定されたことに不満の声が多数寄せられています。特に、医療機関を下支えする事務職員が対象外となっていることに不公平感が募っています。中央社会保険医療協議会・総会(2024 年1 月26 日開催)では、「40 歳未満の勤務医や事務スタッフは極めて多様な勤務形態であることから、基本診療料を引き上げ、各医療機関の裁量で賃上げ対応してもらう」としていますが、基本診療料の引き上げは『標準的な感染対策実施と賃上げ』の両者を念頭において行われたものであり、基本診療料のうち、賃上げのためにどれだけの割合が割かれているのか明確ではありません。また、「多様な勤務形態」は看護職員等も同様であり、これは職種間の分断や医療機関内の規律を乱すきっかけとなりかねません。
 以上のことから、ベースアップ評価料を算定することが「絵に描いた餅」とならないよう、至急、制度の見直しを強く求めます。下記事項の実現に向けご高配を賜りますよう何卒宜しくお願い申し上げます。

  1.  ベースアップ評価料の届出に係る、賃金改善計画書ならびに賃金改善実績報告書の記載を極めて簡素化すること
  2.  医療現場において、診療報酬明細書に「ベースアップ評価料」と記載されることによる患者説明に困らないよう、国が十分な情報発信を行うこと
  3.  ベースアップ評価料の算定対象となる「対象職種」を限定しないこと

以上